畑会の山田です。
だいぶ前の話になりますが旬八八百屋さんに行ったときの話です。
前回のブログの続きです
前回は、旬八青果店さんの店内の様子や食事の内容をお話しをしました。
今回は、このお店を東京産の野菜でできるのか考えてみます。
現在、一般社団法人畑会では、東京の小さな農業を応援する活動をしています。
そのため、話の切り口としても東京の野菜をどう売るか、東京の農家さんがどうしたら活躍できるかなどの視点をもって物事をみています。
今回の旬八青果店において、東京の野菜を使って同じことができるでしょうか。
まず、旬八青果店は、東京の野菜はほとんど使っていないとのことでした。
実際のお店に陳列されていた野菜には東京産の野菜はありませんでした(確か・・)。
東京の野菜を使っていない理由について代表の左近さんがセミナーで言っていましたが
その理由は
「生産量が少ないから」だそうです。
さらに厳密にいえば、B級品の生産量が少ない。からとのこと。
旬八青果店さんが仕入れの中で力を入れているのがB級品のもの。
形や見た目が悪いが味はA級品と変わらないものです。
そのB級品を安く仕入れて販売しています。
※写真はアグリゲートさんから
東京の野菜といえでも単純にA級品の農作物も含めると量が足りないわけではないですが、生産の中からB級品だけの量で見ると少なくなってしまいます。
そんな理由から旬八青果店では、東京からの仕入れはほぼなく地方の大規模農家さんから仕入れているとのこと。
やはりここでも東京の農業の規模の小ささが課題となってしまいますね・・
あわせて左近さんが仰っていたのは
「東京の野菜は狭い土地なため規模の経済が使えない。そのため、いかに単価をあげるかが重要になる(要旨)」
とのことでした。
そういった観点から旬八さんで東京の野菜を使う考えがないとのことでした。
では、やっぱり東京の野菜を旬八のような八百屋でやっていけないのでしょうか?
課題は少なくても3つあります。
①付加価値をつけていかに高く売るか
左近さんもいっていたように東京野菜の単価をあげない限り、ビジネスモデルとして成り立ちません。
以前のブログで、東京野菜の強みとして(1)旬(2)品種(3)鮮度を挙げました。
まずはこの3つの要素を活かして、商品の品質を高くすることが最低限の条件だと思います。
もちろん、これだけでは差別化はできないので、別の付加価値をが必要になります。
例えば野菜をセット販売、レシピや健康情報などのコンテンツ、会員制で農家さんと交流や農業体験を行う、収穫して24時間以内の鮮度のいいものだけを取り扱う、加工品する等、いくつかのアプローチを併せながら単価を上げるアプローチが必要だと考えます。
この点については、畑会で仮説をたてながら、ひとつずつ実践していきます。
②流通体制をいかに構築するか
生産者から消費者まで農作物を届ける機能ー流通ーこれも大きな課題になっています。
一見、生産が東京の大消費地と近いため流通は、地方に比べコストが小さいように思えます。距離によるメリットがあるのは確かだと思いますが、ここでも東京の農業の規模の問題があります。
農作物を各農家さんから集める場合(集荷)など、生産の量がそれぞれ少ないため、かなりの件数の農家さんを回っていきます。結果、集めていくのには手間とコストがかかります。そのため、生産地周辺に集荷場を設けてそこに集めてもらうような仕組みが必要です。また小さな新規就農者の農家さんによっては、野菜を洗ったり袋詰めるする調整場がないこともあり、そういった機能を集荷場に設ける必要があるかもしれません。
また物理的な制約以外にも、受発注管理のわずらわしさも存在します。対応する農家さんの数が多いため、それぞれに対しての受発注の件数が多く、ITでシステム化しなければ管理することができません(できたとしても工数が大きい)。ただ、農家さんはPCスキルなどが乏しく、いまでも書類ベースでやりとりをしているところが多くあり、導入するにも時間やコストがかかってしまいます。最近ではポケットマルシェなどがスマホアプリを通して管理できるツールが出て、PCが苦手な人でもできるようになっているので、少しずつ改善できるようにはなっていますが、まだまだ時間がかかりそうです。その課題を埋めるためには、システムだけではなく、教育といった切り口が必要だと考えます。
現状、東京の野菜の流通は直売所やJAなどがメインでやっていますが、販売力では疑問が残りますし、買取方式でない場合には売り残りのリスク、コストが存在しており農家さんを儲けさせるには、まだ弱いです。
問題ばかりを羅列してしまいましたが、畑会としては収益性のある流通体制を構築する必要があると思います。すべての役割を担うことは厳しいので、それぞれの分野のプロと連携しながら進めていこうと思います。
さらに加えて、アマゾンをはじめとして流通業界が大きな変革期にきています。
今後は自動運転やドローンの実用化が進めば劇的に物流コストは下がるかもしれません。しかし、ビジネスモデルの構造上、利用者側が技術革新の対価を支払う比率が大きく、中小企業にとっては、利便性は享受できてもコスト減はそこまで期待できないのも確かです。
それよりは同じ民間、市民レベルの資源をシェアしながら、コストを削減した流通体制を構築するほうが長期的には安定すると考えます。例えば都市農業においては交通インフラが整っていることを利用して、農作物を運ぶという発想ではなく、消費者に集まってもらって持って帰ってもらうほうがいい場合もあります。
それらの具体的な方法については、また改めて述べますが、いずれにせよ大企業の流通体制に依存してしまうことは大きなリスクだと思ったほうがよいでしょう。
2番目の課題は以上です!
この2つに共通するのは、小規模のデメリットによるものでしたね。
もちろん、小規模だからこそのメリットもあるので、環境に合わせて、戦略的使いこなす必要がありますね!
3つ目の課題については、また次回のブログにて。
3つ目の課題こそがラスボスです^^;
そして都市農業の解決の糸口になるものでもあります。